津軽弁は難解な方言?難しいと思われがちな理由と、津軽弁に慣れるための対策を考えてみた

日々のできごと

進学や転勤等で青森県(特に津軽地方)に来た人が、
一度は経験するらしき「津軽弁、何言ってるかわからない問題」。

私は祖父母と一緒に暮らしていた津軽弁ペラペラのネイティブ。
県外から来た人には青森でどうか楽しい時間をすごしてもらえたらいいなと、
地元を離れた今でも思います。

ついでに津軽弁自体を楽しんでもらえたら最高です。

今日は、津軽弁が難解な方言と思われがちな理由4つと、津軽弁に慣れるための対策について考えてみました。

青森県内には3つの方言がある

先に青森県内の言語状況をちょこっとお知らせします。

青森県内には3つの方言があります。

  • 青森県の西側(津軽地方)……津軽弁
  • 青森県の東側(南部地方)……南部弁
  • 青森県の北東側(下北地方)……下北弁

青森県は、明治時代の廃藩置県で、津軽藩と南部藩がくっついてできた県です。
もともと、青森県の東側と西側で異なる藩だったのです。
さらに、津軽と南部の2つが混ざり、北海道も近い下北半島。
気候も文化も言語も元来異なる地域が3つ。
ゆえに方言も3つあるのです。

津軽弁

日本海側~平内町あたりまでで話されています。

もともとの津軽藩があった地域で、冬は降雪量が多いです。
農業は米作中心。
果樹はリンゴ。
陸奥湾や日本海側で漁業、ホタテの養殖なども盛んです。
高齢者に仕事の話を聞くときは、
各業種の基礎知識や専門用語+津軽弁がわからないと「何言ってるのかわからない」状態になるかもしれません。

県庁所在地である青森市も津軽弁の地域。
津軽藩の城下町がある弘前市には大学があり、
県外からやってくる「わげもの(若者)」が津軽弁の洗礼を受けます。
特に医学部の学生さん、実習のとき患者さんの訴える痛みの表現は慣れるまで大変かもしれません。
まあ、どうにかなるので過度の心配は無用です。

南部弁

「三八上北地方(さんぱちかみきた ちほう)」と呼ばれるところで話されているのが南部弁。

三八上北とは、
三戸郡・八戸市・上北郡・三沢市あたりが含まれる地域です。
太平洋側に面していて、津軽よりは冬の降雪量が少ないです。

もともと南部藩のためか、同じ県内の津軽地方より
岩手県の北側のほうと言語が似ています。

農業は畑作中心。長芋やごぼう、にんにく等の生産が盛んです。
津軽弁よりも柔らかく優しい印象。
イントネーションも津軽弁と異なるため、
同じ県民同士でも、津軽と南部で「何言ってるか聞き取りづらい」という現象も発生します。

下北弁

元南部藩の北側・現在の下北郡です。
ベースとなる南部弁に少し津軽弁が混ざったような方言ですが、訛りがそこまで強くありません。

フェリーで北海道に行くほうが、
車やフェリーで何時間もかけて青森市に行くよりも近いこともあります。

津軽弁が難しいと思われがちな理由

私は津軽弁のネイティブスピーカーですが、
現在ほぼ標準語(共通語)を話して暮らしています。

津軽弁のどんなところが、他の地域からやってきた人とって難しいと思われがちなのか、
考えてみました。

アクセントやイントネーションがわかりにくい

単語そのもののアクセント(単語の中で高く発音する場所)や、文全体のイントネーション(音の上がり下がり)が独特です。

【アクセントの例】
「ありがとう」という単語を例に説明します。
標準語(共通語)では「あがとう」というように、「り」の音が一番高くなりますよね。
津軽弁の場合は「ありがとー」というように、「とー」の音が一番高くなります。

【アクセントとイントネーションが変化する例】
「箸(はし)」の場合。
標準語(共通語)の発音では「し」……「は」の音が高めのアクセントなりますよね。
津軽弁の発音でも、しいて単独で発音する場合は、一応「し」になります。
東日本の発音と一緒です。

ところが「箸です(はしです)」のように文になると、イントネーションが変わります。
共通語では「しです」
津軽弁では「はしです」
のように太字の部分の音が高くなります。

ちなみに「橋(はし)」の場合。
共通語のアクセントは「は」。
津軽弁も、単語を単独で話すと、一応「は」です。
「橋です(はしです)」のような文になると
共通語では「はです」
津軽弁では「はしす」
になります。

箸(し)と橋(は)を比べて、橋のほうを抑えめに発音しているのです。
単語のアクセントとしても、文のイントネーションとしても区別しているのですが、
わかりにくいといえばその通りですよね。

このような
・個々の単語のアクセントの違い
・文になったときのイントネーションの変化
が津軽弁に戸惑う原因の1つかもしれません。

語彙(単語)の意味がナゾ

単語の意味がわからないのも、難しい理由のひとつ。

あげた、おどげ、じゃんぼ、ちょす、むっつい、よろた……
確かにわかりにくい。

そんな中でも、比較的わかりやすい単語もあります。
理解のポイントは「古語」です。

例えば「わらし」という単語を例に説明します。
「わらし」「わらはんど」は津軽弁で「子供」「子供たち」という意味です。

「座敷童(ざしきわらし)」という言葉、聞いたことありませんか?
古い屋敷に住む、幸運を呼ぶといわれている「子供の姿をした霊的存在」ですね。

つまり、童(わらし)=こども です。
古語で子供は「童(わらわ)」と言われていました。

津軽弁などの方言には、古語がなまって残っているとも言えますね。

ちなみに「〇〇んど」は、おもに複数形の時に使われます。
古語ではありませんが、
「〇〇共(〇〇ども)」が訛って「〇〇んど」になったと解釈すると理解しやすいです。

「わ」=「わたし」の意味。
「わんど」=「自分たち」

「な」=「あなた」の意味。
「なんど」=「あなたたち」

「わらはんど」=「こどもたち」ですね。
※単に「こども」の意味で使われることもあります。

「じぇんこ」はお金のこと。
津軽弁では「〇〇っこ」ということが、わりとあります。
銭(ぜに)→ぜにっこ→じぇんこ と変化したと考えれば、
お金のことだというのも腑に落ちますよね。

ちなみに小銭のことは「だら」「だらっこ」ともいいます。
「ドル(doller)」が訛った……はずはなくても、もしそうだったらと考えるとおもしろいですね。

発音がはっきりしない

特に高齢者と話していると感じることとして、
「い」と「う」の発音がはっきりしないことがあります。

「うんうんうん」とうなずきながら、
しゃべっている音声は「う(い)ーう(い)ーう(い)ー」だったりします。
口、あんまり開けないで言ってます。

「し」と「す」、「ち」と「つ」も曖昧だったりします。

これが聞き取りにくい原因の一つかなと。

外国語の発音では有利になったりします(笑)

音が短縮される

一音ずつはっきり発音せず、短縮してしまうこともよくあります。

例えば津軽地方で発行されている新聞の一つに「東奥日報(とうおうにっぽう)」があります。
「とうおうにっぽう」と発音するのはニュースのアナウンサーぐらいで、
一般の人はたいてい「とーにっぽー」です。

長音が脱落してます。どこ行った……
短いほうが発音ラクなのでこうなったのでしょう。

ほかにも「ぼのご」という単語。
これ、「ぼんのくぼ」(首の後ろの中央にあるくぼんだ場所)が訛ってます。
「ん」が脱落して、「くぼ」が「ご」になってます。
よーく聞くと「ぼんのご」に聞こえるような……気もしなくはないです。
短いほうが発音がラクですから、こうなったんでしょう(2回目)

ついでに、「おどげ」という単語について。
「おどげ」は「おとがい」(下あご)が訛っています。
「がい」が「げ」になりました。
短い音のほうが発音がラクで(以下略 3回目)

余談ですが、
30年以上前、当時保育園児だった私が劇で言ったセリフは
「棚の上の物とろうとしたっきゃ、椅子がら落ぢておどげぶつけだ~」
(意訳:棚の上の物をとろうとしたら、椅子から落ちて下あごをぶつけた)
でした。
「おとがい」なんて言葉、日常生活であまり使わないと思うのですが、
津軽弁ではしっかり残っているあたりがおもしろいです。
きっと日常的に「おどげ、ぶつけでいだ」人が多かったのでしょう。

津軽弁に慣れるための対策

「津軽弁、何言ってるかわからない問題」に遭遇して心が折れないために、
対策を考えてみました。

地元民に通訳してもらう

一番簡単な方法は、地元民(特に若い人)に通訳してもらうことです。
テレビで共通語を浴びながら育っている世代(30~50代ぐらい)は、ほぼ全員が津軽弁と共通語のバイリンガルです。

私も転勤してきた人に津軽弁の通訳を依頼されたことがあります(笑)

会話の中に、業種特有の専門用語などが出てこなければ、問題ないかと思います。

若い人、特に祖父母と一緒に暮らしていない人は、津軽弁独特の単語がわからない場合もわりとあります。
その場合は、少し上の世代の人に聞きましょう。

たぶん、喜んで教えてくれると思います。

独特な言い回しは覚えてしまう

説明でしにくいですが、津軽弁独特の言い回しみたいなものもあります。
通常は文脈から意味が推測できますが、覚えてしまったほうがラクです。

共通語      津軽弁
「~~だから」→「~~だはんで」
「~~だろう」→「~~だびょん」
「~~だよね」→「~~だっきゃ」

女子高生でもこんな感じで津軽弁をしゃべっています。

高校時代、大阪出身の友人に

「んだっきゃー」がカワイイ

と言われたことがあります。

定型文みたいなものなので、
覚えてしまうといっている意味がだいぶわかるようになります。

まとめ

県外から青森県(特に津軽地方)に来た人が、
「津軽弁、何言ってるかわからない問題」の原因と、その対策を考えてみました。

津軽弁もれっきとした日本語です。
外国語ほどハードルは高くありません。
古語の残り香と、なまりの音に慣れて、津軽弁を楽しんでもらえると嬉しいです。

へばの~

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